氷河時代を生き残るために建設業経営に覚悟と知恵を ~新年若手経営者座談会~
―出 席 者―
▽(社)山形県建築協会
株式会社たくみ
代表取締役 佐藤靖之
▽横浜建設業青年会会長
株式会社白井組
専務取締役 白井崇雄
▽静岡県若手建設経営者の会副会長
釘ヶ浦建設株式会社
専務取締役 宮村明徳
▽大中建若手経営者の会会長
株式会社大野組
代表取締役 大野正勝
▽(社)鹿児島県建築協会青年部会副部会長
株式会社堀之内建設
取締役副社長 堀之内茂樹
(司会)
▽広報委員長
豊田剛
新政権で工事が更に減り中小業者は地獄の苦しみ
単純に業者の数を減らせでは建設業を貶めている事になる
土地や資金がない中小業者は新分野いきたくてもいけない
自民党の小泉政権以降、公共工事の減少が毎年続き、建設業界は、塗炭の苦しみを味わってきている。このため、多くの企業が倒産・廃業というかたちで、姿を消している。こうした酷い状況が改善されることはなく、昨年9月の民主党政権誕生によって、「コンクリートから人へ」という意味不明なキャッチフレーズをもとに無駄な公共事業は止めるとの方針が示され、公共工事の大幅な削減が見込まれている。デフレが進行する経済状況で、民間の建設工事が増える見込みはなく、地方の自治体の財政状況も厳しさを増していることから、地域の中小建設業者は、地獄を見るような気持ちに追い込まれている。
建設業者の拠りどころである国土交通省に新たにやってきた大臣は、建設業者の数が多すぎるとの見解を示し、中小建設業者は、他分野への方向転換を考えるべきだとしたが、国内の産業で新参者が入っていて活躍できるような甘いところは、どこにもない。
このように中小建設業の置かれている状況は、暖かさを望むべくもない氷河時代に突入しているといえよう。氷河時代にどう生き延びるのか、若手経営者に集まってもらい、地域の厳しい状況、現下の課題克服、今後の経営方針などについて、豊田広報委員長の司会で話し合っていただいた。
政権が代わり元の木阿弥< /strong>
豊田
御承知のように、暗い事柄ばかりで、非常に厳しい新しい年が始まりますが、皆様も経営的にも大変御苦労をされていることと思います。その辺の実情を今日はいろいろとお聞きし、中小企業の経営はどうあるべきかという指針にしたいという思いでお集まりいただいたわけです。
私は、広報委員長をやっております豊田です。本日の司会を担当しておりますので、よろしくお願いいたします。
早速ですが、今、これだけ厳しい、厳しいと言っている中でも、各地域によって多少の差があるのではないかと思っています。そこで、各地域の景気の動向と地元における建設業の現況について、お聞きしたいと思います。まず、山形県の佐藤さん、現状はいかがですか。
佐藤
本当に厳しいという状況は間違いのないところです。この前の補正予算で後押しがあって、公共工事も大分、出ていましたが、政権がかわって、また、もとどおりに戻ったということです。
ちなみに山形県では、平成11年度の投資的経費予算が1459億7900万でしたが、平成20年では687億4000万円に減っています。当社は建築工事が主体ですので、特に監理と建築、住宅等の予算は5億7800万円に減っています。業者数が多いとはよく言われますが、余りにも急激な予算の圧縮で、本当に厳しい状況が続いています。
山形県の予算半分以下に< /strong>
豊田
そうすると、全般的にはいわゆるピーク時から比べるとどれくらいのパーセンテージになりますか。大体3分の1だとか、半分だとか?
佐藤
これは県だけの予算ですが、建築においては4.8%で、全体で言えば47.1%になっていまして半分以下です。
豊田
今のは山形県のお話ですが、都市部の大阪の現況はいかがですか。
工事発注量も3割減る状況< /strong>
大野
山形の佐藤さんからもありましたように、大阪もご多分に漏れず、大変厳しい状況です。西日本建設業保証の調査でも、地元の景気が悪くなったという評価を4割強の業者が出しています。また、工事の発注量も2割、3割と減ってきているのが現状です。そのような中、ほとんどの発注物件が一般競争入札になっていますから、経審さえ出していればどんな業者でも入札に参加できるという形になっていまして、全く営業努力のかいがないといいますか、常にパソコンに向かって毎日のように電子入札をしている状況です。
工事が取れましても、発注者の予定価格から1割5分から2割を切った中で受注をしますので、利益率が全く上がらないというのが現状です。職員の給料だけでも出たら大助かりやなあという状況で、実際、協力業者にもかなり金額を下げてもらいながらやっていっているのが実情です。
同業者がばたばた倒産< /strong>
このような状況ですから、同業者も、ばたばたと倒れている状態です。それなのに、新規業者が増えてきたりしており、業者数はあまり減っていないような気もしています。入札の結果を見ますと、全然知らない名前の業者が仕事を取っていくということになっていまして、本当に酷い状況が続いています。
豊田
それでは、鹿児島の堀ノ内さん、現況はいかがですか。
当社受注量がピークの半分< /strong>
堀ノ内
今、大阪の大野さんが言われたのと全く似たような状況です。当社の話をしますと、数年前のピーク時に比べると、受注量が約半減しています。だからといって、今まで会社に従事して下さった社員を簡単に減らせられない、非常に難しい判断を迫られている今日の状況です。また今後の会社継続の為に、若い社員を雇用したいのですが、なかなかそこに踏み切れない。そういう厳しい状況です。
豊田
公共事業に対する国民の姿勢から、工事量が減る事に、なかなか歯止めがきかない状況にあることは否めないと思うんです。ですから、その中でどう我々は生きていくかというテーマになってくるのではないかと思っています。
では、次に新政権についてです。自民党から民主党に政権が交代しましたが、その辺の影響はいかがですか。横浜の白井さんにお聞きします。
市長交代で一部事後公表< /strong>
白井
我々は神奈川県の中でも横浜ですが、新政権によって入契制度が変わったとか、仕事量が増えたとか、そういう変化は今のところはまだ見えてない状況です。
ただ、同じ時期に市長の交代がありました。9月に新しい市長が就任、2カ月半たったところでして、ようやく前市長から新しい市長にかわり始めたという傾向が見え始めています。
それは何かと申しますと、前市長の場合、発注工事に関しては、ほぼ、事前公表がすべてでしたが、つい最近になりまして、事後公表案件が数件見られるようになってきました。新市長は口頭では述べられていませんが、それが市長がかわったあらわれなのかなと、私ども、若手の会の中では話をしているところです。
豊田
静岡の宮村さんはいかがですか。
静岡県も仕分け工事減少を懸念< /strong>
宮村
発注予定物件が急に延期になってみたり、復活してみたりと役所側も混乱している感があります。
静岡県では川勝知事の下、事業仕分けが10月31日から3日間行われました。その結果は明らかにされていませんが、ヒアリングは大変短かったと聞いております。公共工事の減少が懸念され、不安です。
豊田
今、話題になっています、公共事業に対する事業仕分けについて、どなたか御意見はありませんか。やり方が、かなり粗っぽいのではないかとか、いろんな批判があります。
宮村
これは30年ぐらい前でしたか、時代は余り定かではないんですが、当時の静岡市の市長さんが、駅の南側に1車線の道を開こうとしたら、気違いと呼ばれたらしいんです。車も通らないのに道をつくるのかと。そういう話があったそうですが、現状、今日においては南側に片側2車線の道路が2本通っていますが、時間帯によっては渋滞しております。今、幹線の3本目を通そうとしています。
だから、役所の方とか、特に議員さんにお願いしたいのは、直近の金がないから公共工事を止めるのではなく、いろんな新情報をもとに、20年、30年先にこの国土をどうしていきたい、だからこういう公共事業が必要である、という観点に立って仕分けをして頂きたいと思います。
豊田
ほんとですよね。そこまでに行く過程でいろいろ苦労して、事業化になったのを、ばっさりやられるというのは大変なことだと思います。とにかく最低限の、やらなくてはいけない社会資本の整備は当然やらなければいけないし、その辺のところを、事業仕分けという短時間の作業で白黒つけられるのかどうかに大きな疑問が残ると思います。
新年号が出来上がる頃には、その結果が恐らく出ていると思います。それに対する考え方を取りまとめて、業界に反映していきたいと思っています。
次にお伺いしたいのはダンピングの状況です。佐藤さん、その辺はいかがですか。
ダンピング頻発予定価格の60%< /strong>
佐藤
当社は、隣の宮城県にも営業所がありますが、山形県と宮城県とはちょっと違いますね。宮城県ではダンピングがかなり頻発しており、予定価格の半分ぐらいとか60%とか、そんな感じが多くなっています。それで、低入札調査になるんですが、結局は、ほとんどが落札というおかしなことになっています。
ただ、国土交通省は、ダンピング防止ということで、低入札と特別重点調査という2段階があって、特別重点調査になると、ほとんど失格です。そんな状況で一応、カバーはしてもらっていますが、自治体の方は全然関係ありません。
豊田
低入の場合は、失格にはなりませんか。
佐藤
失格にはなりますが、自治体によって全然違います。
豊田
要するに、失格基準があいまいで、業者が、できると言えば、それをうのみにして全部、役所がお墨つきを与えているんですね。そんな金額ではできないことは明らかで、それをやっている行政の方に問題があるのではないかと思います。静岡ではどうですか。
宮村
最近、標高の高い山の山頂工事で施工条件が大変厳しい全国入札に参加しました。落札価格は弊社の半分以下という驚くような数字でした。工事は終わったそうですが、実際の現場作業状況を役所にお聞きしたら、弊社の職員・下請業者さんには、とてもそんな過酷な作業条件での工事はさせられないと思いました。
建設業は危険な業種です。現場は予算が無いと、安全を削り、さらに危険な方向に向かいます。発注者は、ダンピング単価が知恵と工夫によるものなのか、安全を削り、弱いものをいじめている単価なのかの見極めをお願いしたい。また、落札単価を新単価とすることにも一考頂きたい。
豊田
鹿児島は、ダンピングについてはいかがですか。
発注形態によりかなりダンピング< /strong>
堀ノ内
最近あった入札ですが、それは半民間、半公共という形式で、工場をつくるというプロジェクトでした。仕事がない時代ですから、当社なりの価格を応札させて頂いたのですが、当社応札額の約3割安程度で、落札をされた業者がいました。全てのプロジェクトでダンピングがあるとは言い切れませんが、発注形態によっては、ダンピングがかなりあると言ってよいという現状です。
豊田
都市部の大阪、横浜の方は、ダンピング状況はいかがですか。
大野
ダンピング防止については大阪府も大阪市も最低制限価格を設けていて、割合考えてくれています。大阪府は最低制限価格を公表していますし、大阪市の建築工事は、予定価格の85%で設定されていることがわかっていますので、数十社が同価落札して、電子くじにより落札候補者の順位を決めている入札がほとんどです。
大規模な工事になりますと、低入札調査になりますが、大阪市の場合、直工の何%まではオーケー、一般管理費は何%までオーケーというような基準を公表してくれていますので、それに見合う積算をしていれば、低入でも契約をしてもらえる。ただ、役所の積算内容となかなか合いませんので、審査が通らない場合には、2番手、3番手に落札されていくということになります。
結局、仕事を取らなければ生きていけませんので、数多く応札してしまい、落札すると、事後審査で入札の翌日には書類を全部出さないといけないんですが、すべての積算をきっちりしているわけではありませんし、書類が揃わなくて、失格していく場合もあります。
最近では3割、4割を切って落札する業者は少なくなっていますが、衛星都市などでは、最低制限価格を決めてないところもありますので、4割を切った契約をしてしまう自治体もあるように聞いています。
積算できない会社が工事受注< /strong>
豊田
横浜はいかがですか。
白井
横浜は、大阪と同様、ダンピングの防止策として、最低制限価格を設けて対応していますし、最低制限価格の算出方法は、市も県も公表しています。なおかつ、事前公表になりますと、何%で落ちるというのがすべて見えてきていますので、積算のできない会社も応札ができてしまうというおかしな状況です。大体そのパーセンテージに割り当てて、最後の係数が千分の5からという数字だけを当てればいいわけで、積算も何もできないような会社がどんどん応札して受注していきます。
また、大きな工事や、総合評価方式になりますと、調査基準価格等を設けて、それ以下の業者に関しても、低入札調査をした上で受注するというケースも多くなっています。また、それを割り込んだ低入札価格を下回ってしまうと失格というようなラインは、同様に、設けている状況です。
いずれにしても、横浜市の事前公表の場合には、落札率は、建築が87%ぐらいになっています。土木、水道ですと、84とか82とかに落札率が集中していて、利益が出しにくい現状です。
豊田
ダンピングに関連して、各地方自治体の入契制度、入契法の改定ぐあいはいかがですか。
まず、山形の佐藤さん、入契法についてはいかがですか。
佐藤
ほとんど一般競争入札になっています。ランクごとに分けられていまして、自治体は事前の公表があります。
総合評価制度も導入はなされていますが、逆転で落札する業者が出るのは、年に2、3件ぐらいでしょうか。ですから、価格のほかの点数を重視しているようにはまだ見受けられませんね。先ほどの話とも重複しますが、山形県の場合は、失格も出ていますし、価格、低入に関してはかなり厳しくなっています。
豊田
事前公表と事後公表とでは、どちらがいいと思っていますか。
佐藤
やっぱり事後の方がいいと思いますね。
豊田
趨勢として、事前を止めて事後にしろという声が大きいんですが、これについては、東京都もそうですが、メリット、デメリットがあり、なかなか地方自治体が踏み切らないというのが実情ですね。鹿児島あたりはいかがですか。
堀ノ内
鹿児島もほぼ一般競争入札です。物件によっては指名競争入札があるという感じです。あと、予定価格の公表に関しても事前公表が多いのですが、金額によっては事後公表の場合もあります。考え方は色々あると思いますが、事前公表よりは事後公表の方が良いと考えています。
豊田
その理由は、業者の積算能力という意味で、事後公表にしてくれということですか。
適正な価格で適正な競争< /strong>
堀ノ内
それもあります。しかし、会社のリスクを考えると事前公表の方が良いとも言えます。しかし、今後はしっかりとした見積り積算を行い、適正な価格で適正な競争原理の中で落札する事が大切なのではないかと考えます。
豊田
今の役所の方の基本的な考えは、総合評価と積算だとか一般競争をかみ合わせれば、事前も事後もないだろうというような解釈ですが、私は決してそうではないと思うんです。それと、特に総合評価の場合には、それを判定する職員が逆に足りない、仕分けができないという地方自治体もあると聞いています。ですから、その辺のところは、ほんとに温度差があるんじゃないかと考えています。
それでは、次に、各会社で1級、2級だとか、いろんな技術者を抱えておりますが、現在、どのようなことが行われているのか、聞かせていただきたいと思います。
静岡の宮村さん、いかがですか。
宮村
技術者、特に資格の件で困っているのが、先ほどの入札の件にも絡んでしまうんですが、「経験者」という点です。我々中小向けの5、6千万円の工事だと、係員は1人しかつけられないような状況です。1億円以上あれば2人つけることも可能でしょうけど。入札案件で、例えば橋梁下部工経験者とか、同種工事経験者とされると常に同じ人間が配置予定者として入札に参加し、経験のない社員は一級を持っていても経験者になれません。そうした経験者は年齢が上がっているので、その人がいなくなると、その入札には参加できなくなります。
大手企業のように、10億円を超えるような工事をしていれば、何人も監督さんが入るので、常に経験者が増えていくのですが、それができないので、非常に苦慮しています。
豊田
物件が出て希望の申し込みとか指名をやるときに、3カ月間、その会社に在籍していなくちゃいけないとか、いろんな付帯条件はついていますか。
堀ノ内
ついていますね。3カ月以上雇っていないと認められません。
豊田
この件について、大阪の方はいかがですか。
技術者少ないと応札もできない< /strong>
大野
もちろん、入札の募集要項にもありますが、主任技術者の専任または非専任という問題ですね。
土木でしたら2500万以上、建築工事は5000万円以上で専任が必要ですので、ほかの現場で専任を問われている人は使えない。そうなってくると、恒常的に雇える技術者が少ない我々は、応札することもできなくなってしまうわけです。
そういうこともあるので、予定価格を見ながら、物件をねらって応札しています。最近、経営管理者や営業所における専任技術者は現場についてはいけないというようなこともありますから、許可申請でも大変に苦労をしながら、やっているというのが実情です。
豊田
それともう一点は、技術屋さんでも、それから作業員でもそうですが、高齢化が進んできている。若い人が入ってこないというのが現状ではないかと思います。それについて、どうしていったらいいかをお伺いします。横浜の場合は、その辺はいかがですか。
白井
弊社の場合で申し上げますと、入契制度改革が行われてから、なかなか官庁工事の受注の機会がいただけておりません。うちは建築専業でやっておりますので、民間主体というような流れを社内全体で行ってきました。そのため、なかなか受注できない官庁工事の主任技術者の配置については、今のところ苦労した経緯はありません。
ただ、官庁工事は受注すれば、新入社員や若い技術者たちが民間ではなく官庁の仕事をやることによって書類作成や技術というものの向上が図れます。しかし受注する機会がないので、技術力の低下については危惧しています。ステップアップや技術向上が図れる機会があった方が民間の仕事をする上でも弊社にとってはやっぱりいいのかなと考えています。そのため、なるべく入札には参加している状況ですが、受注に至らず、それによって新入社員もここ5年ぐらいは採用出来ない厳しい状況です。役所側からも地場の建築産業の技術力を守るためにも多くの受注の機会をいただきたいと思います。
役所の労務単価実勢と乖離< /strong>
豊田
やはり民間と官庁工事の監督の仕方は大分差があるかと思いますが、その辺の融合性は大変難しい問題ですね。
次に、労務費や資材価格が、いわゆる役所の単価と業者のそれと、非常に乖離していると思うのです。昨年は、ガソリンの価格だとか、スライドをやっていただきましたが、デフレ傾向になってきまして、今後、問題があろうかと思うのです。いわゆる実態に即した単価を役所の方でちゃんと見ていただけるのか。この辺について議論をしていきたいと思うのですが、鹿児島は労務単価などはいかがですか。
堀ノ内鹿児島は今、耐震補強工事が多く、その中に左官工事があります。それが、物価の上昇等により県の単価が合わないというのが実情でした。今まで土木工事に関しては変更をみて頂けた事例はありましたが、建築工事はあまりその様な事例がありません。しかし、近年はガソリンや鉄関係の物価上昇により、スライド方式や追加工事で建築工事でも変更をみて頂けた事例がありました。今後はしっかりとした見積りと、しっかりとした根拠をもって、発注者側と協議をしていく事が必要です。
豊田
山形の佐藤さんはどのようにお考えですか。
佐藤
確かに役所の建築工事は耐震改修工事が多いと思います。それも専門業者が入って予算を組む場合が多く、その工法で計画されます。それで施工する業者がほとんど決まってしまうんです。ですから、その専門業者の価格が全てであって、利益が出にくい工事が多いです。
予算立てをおこなうにも、設計事務所の単価は専門業者の単価に掛け値をして予算立てしますから、厳しい予算になっていくのは解っています。耐震工法が決まっている事で、工事費の多くの割合を施工するその専門業者に協力いただかないと利益の出ない工事になってしまいます。そういう場合が多々あります。
豊田
横浜の白井さんあたりはいかがですか。
逆スライドになったら大変< /strong>
白井
私どもの会社では経験がないのですが、先ほど鹿児島の堀ノ内さんが言われたとおりスライド方式というのがあったんです。今度、逆スライドというような動きが行政側から出たという話は聞きました。要は今まで単価が高かったものが下がったわけですよね。それによって、設計価格も高かったのですが、そこに差額分が生じた。それを戻せということです。私どもは経験がないので、ちょっと詳しく説明はできないのですが、逆スライドとなったら大変です。
豊田
最後に、お一人ずつお聞きしたいのですが、このような厳しい状況で、皆さんは若手経営者といっても、今本当に一番活躍されている方々だと思いますので、今後建設業をどう導いていくのか、お伺いできればと思います。まず鹿児島の堀ノ内さんからお願いいたします。
堀ノ内
建設業というのは非常に特殊な業種だなと思っています。それは、会社運営が経営事項審査の点数によって影響があるからです。自社に対し点数を付けて下さる方がいる。他業種で点数をつけられる業種というのはあまりないと言えます。もちろん建設業にとって点数を上げる事だけが全てではありませんが、点数を上げるために様々な形で企業努力をやっているわけです。
他の業種をみると、例えばサービス業では、元々競争原理があって、お客様に対するサービスも非常にしっかり出来ていると感じます。今後、建設業も、顧客に対して最高のサービスと信頼を提供していく。そういう考え方にシフトしていくことが非常に重要な事ではないかと考えます。
豊田
次に大阪の大野さん、いかがですか。
大野
弊社もかなり厳しい状況ですが、先代、先々代から引き継がれている会社ですので、何とか盛り立ててというふうに思っています。なかなか今の状況は厳しく、特に入札制度がこういう状況ですから、それに即して頑張っていかなければと思っております。
先ほどおっしゃっていたように、民間工事にも手を出しながら、大中建若手経営者の会の仲間を通じていろいろ情報収集しながら、例えば、業者や職人を紹介していただいたり、資材の共同購入をしませんかというような話も出ておりますので、この会を中心に情報交換して頑張っていきたいなと思っております。
豊田
それでは宮村さんの方から……。
倒産、自殺が非常に多い< /strong>
宮村
建設業という形態自体が請負形態のために銀行からの評価が非常に低いんですね。で、小さな資本とか会社の割に結構大きな借入金が動くんです。そのために、株式会社は本来、保証の範囲というのは決まっているはずなのですが、大体中小だと個人保証を必ずしている状況です。
そのことを踏まえた上で考えると、特に土木なんかは官庁さんからもらうような仕事が90%以上ですね。そこの仕事を減らすということは半分やめなさいということです。ですが、いきなりやめられないですよね、みんな。だから、倒産したり自殺したりするケースが非常に多い。
全体が減っていくのなら減っていくで、全体の方針としてはしょうがないのかもしれませんが、いきなりばさっとやられた場合には、会社が倒産するような大変な状態になる。ほとんどが官庁から仕事をもらっている。特に土木はそうです。その辺を考慮して、軟着陸させる方針を是非出していただきたい。
自分の会社としては、今、とにかく100年に1度の不況なので、逆に言えばここを乗り切れば強い会社になれるんじゃないか、ここを乗り切れれば、この先、危機があっても、もうちょっと行けるんじゃないか、そういうことを今、社員には言っているんです。
豊田
それでは次に白井さんはいかがですか。
2年前より100社減る< /strong>
白井
横浜でも、景気が悪い状況で、我々若手の会でも1割ほどが倒産をしている状況でして、協会の方でも2年前は390社ほどいた協会員が現在280社程度ということで、もう100社以上減っている状況にあります。退会するだけの会社もありますし、会社をたたんでしまうケースもあります。
私どもは建築専業ですので、民間という部分にシフトすればということもありまして、何年か前にそういう方針を持って取り組んでいます。ただ、もっと明確に、例えば新築工事しかやらないとか、改修工事しかやらないとか、的を絞ったような経営をしていかないと、この先続かないというように思います。
で、先代、先々代から続いている企業ですので、何とか今の時期、守って、乗り越えたいという思いがあって、まあそれは皆様も同様にあるかと思いますが、この不況を乗り越える方策を常に考えている状況です。
豊田
それでは最後に佐藤さん。
佐藤
当社は建築100%でやっている会社ですが、白井さんが言われたように、民間工事に力を入れてやってはいるものの、現在は官公工事に頼らざるを得ない状況が続いています。
そんな中でいろいろと考えてはいるのですが、例えば住宅建築をやろうとすると、建設業とはまた別の業態にしなくてはならないと思います。住宅だけでもだめですし、建設業として得意とする建築工事をしっかりとやれる会社になるにはどうしたらいいのかなと、今、悩んでいるところです。
周りを見てみますと、いろいろと業種転換をしている会社もあります。東北ですから、農業分野に進出している会社もありますが、ほとんどがうまくいってないのが現状です。
老健施設といったものを経営される方も出てきていまして、そういった方は、まあまあうまく回り出してきているようです。当社はしっかりと建設業としての建築工事を行う会社として今後もやっていこうと考えています。その中で環境などのキーワードを考えて、建設業の中の新しい分野にも進出していかなくてはならないと考えているところです。
新分野の成功率建設業2割以下< /strong>
豊田
非常に苦しい中にも前向きな姿勢で頑張っていくというようなお気持ちがあらわれていますので、頼もしく思っています。
今のお話を総合しますと、まず一つは、我々がこういう御時世で淘汰されているということの中で、それを、ばっさりやるということではなくて、ソフトランディングで、少しずつやってもらいたいというのが願いじゃないかと思います。
それからもう一点、話題に出ていました新分野への移行については、都市部と地方とをはっきり分けていただかないといけない。大阪や横浜でもって土地がなんにもないのに、林業だ、畜産だという新分野へ行けといったって、できるわけはないし、また、地方のいろいろな新分野の成功率を聞いても、我々建設業は2割以下。残り80%近くは失敗しているというのが実情ですから、新分野に移るといってもなかなか難しい問題ではないか。その辺のところを皆さんがこれからどう克服するか。大きな課題ではないかと考えています。
最後に当たりまして、今まで暗い話ばっかりですが、新年号ですので、未来についてこういうふうにしたいというような明るい話題がありましたら、お聞かせいただければと思っています。
佐藤建設業界ではM&Aや合併とかというのはあまり聞きませんが、いかがなものでしょうか。行政指導の合併、例えば3年後に経審を引き上げるから何とかしなさいとか、そういった方法というのはどんなものでしょうね。
豊田
本当に勝ち負けではなくて、だめだといってあきらめた会社をどのように救ってあげるかを考える。これは一つの課題だと思うんです。
宮村
現在、国交省の中部地方整備局にて建設ICTが実証実験に入っております。
近年、コンピューターや通信技術などの情報化分野で急速な技術革新が
進んでおり、建設産業でもこれらの情報通信技術ICTを活用した合理的な生産システムの導入・普及の促進が進められております。
具体的には、まずマシンガイダンス技術と呼ばれる物があります。イメージとしては、道路工事における法面工事において。バックホウにGPSが搭載され、各アームにセンサーをつけて法面掘削、運転席のパソコンに3D―CAD設計図と、バックホウの掘削ラインが表示される。運転者はこのパソコンを見ながら掘削作業を進めていく感じです。
また、測量技術ですが、GPS測量・3Dスキャナー等があります。そして3D―CADによる3次元設計・管理と最先端の技術を情報通信技術でつないでいきます。若者の建設離れが進んでおりますが、是非、子供達に見せたいですね。現場見学会もあるので、興味のある方は「建設ICT」でホームページを検索してみてください。
提案をしないそれは反省点< /strong>
豊田
ほかに、将来にわたって何か希望だとか、ありますか。
逆に皆さんにお諮りしたいというか、考え方で持ってもらいたいのはこういうことです。つまり、官公庁の仕事をやっていますとどうしても受け身です。自分から行動を起こすということになれてない。役所の方から仕様書をもらい、図面をもらうということで、お仕着せです。こっちから提案するという能力が足りない。それは反省点として考えなくてはいけない。
だから、現場の会社をこれから直すという意味は、新分野でも何でもそうですが、こういうものがありますよとこっちから提案していくということです。そうでないと、恐らく建設産業全体がマイナー思考の機運から抜け出せないのではないかと考えています。その点、いかがですか。
役所で広報誌が読まれている< /strong>
宮村
今、協会の広報委員会に所属しているのですが、広報委員長曰く広報誌を意外に役所の人が読んでいるということです。配っているのがうちの地元で700部ぐらいなのですが、それを意外に官公庁の人が読んでいる。
豊田
意外とこの全中建だよりも見てもらっていて、ああ、全中建ってこんな主張をしているんだということで、反響が大きいですよね。
大野
何年か前までは大中建の加盟団体の中でも役所と技術研修会をしたり、いろいろな工法の研修や、積算内容と現場の状況との矛盾点などの話し合いをする機会もありました。
また、役所へ行きましても、担当者とひざを突き合わせて話をする機会もありましたが、業者と工事の打ち合わせ以外は話をしてはいけないというような状況になっていますので、提案なり要望ができにくい状況ではないかと思うんです。
豊田
あと、ほかに何かありますか、明るい話題は。
佐藤
工事の計画をする場合に、情報の流れを建設会社からスタートさせると、競争原理が働き、良くなってくると思うんですが、どうなのでしょうね。
豊田
どういう情報が欲しいんですか。
佐藤
例えばこの建物をこの程度の耐震性を持たせるにはどのような方法があるのか?という情報を公開してそれぞれが工法や工事期間、予算も含めて提案する方法には出来ないものかと思います。目的が達成される工法であり予算も適正であれば、その中で入札を行えば適正な競争が出来ると思いますが………。
堀ノ内
それが実際できるのであれば、非常にフェアな受注になりますよね。「当社はこの様な手法・工法でやります」と言ったプレゼンを行い、あとの判断は発注者側がすればいいわけですから。
豊田
本日は長時間ありがとうございました。非常に厳しい問題はありますが、今日の座談会ではこれから前向きにやっていこうというような御意見も出ていますので、今年一年、何とか頑張って、若手の方が業界を支えていただきたいと思っています。
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