特集 建設業界で働く女性たち

2018年04月17日

3/1 建設産業女性活躍セミナー 全国大会

平成30年3月1日(木)建設産業女性活躍セミナーが三田共用会議所で開催されました。
全中建からは(一社)沖縄県中小建設業協会 當間ありさ様(有限会社 牧野建設)がパネラーとして参加をして頂いたほか、名古屋地区開催の際にパネラーとしてご参加頂いた和田智恵様(株式会社 加藤建設)のほか、當間様と同じ会社の本村恵奈様(有限会社 牧野建設)にも会場にお出で頂きました。

主催者側の挨拶後、パネラー6名の自己紹介があり、コーディネーターの籠田淳子様(有限会社ゼムケンサービス)の進行により ①建設産業は男性社会のイメージが強い ②トイレなどハード面の遅れ・子育て・介護などのソフト面の課題 ③女性の活躍・スキルアップ ④情報発信についてディスカッションが行われました。

①の業界イメージについて 男性メインの職場であるのは今もあまり変わらない、大きな理由として女性の数が圧倒的に少ないから。行政側に女性が増えてきたことで徐々に変わってきていると思うなどの意見があり、當間様からは「最初は相手にもされず雑用ばかりだった。オペレーターの仕事は力では男性に負けるが、女性の方が機械操作は細かく丁寧だと思う。」と発言されました。

②トイレなどのハード面では、工期が短い現場では費用の関係で男女のトイレを設置するのは難しい、大規模な工事現場では環境整備は整っているなど、トイレを中心に皆さんの現状報告があり、この中で當間様は「入社当時の現場のトイレはとにかく汚かった。これからは国だけでなく県や民間工事でも女性専用の設備を設置してほしい」と発言されました。
子育て・介護などのソフト面では、各社の取組みのほかイクメンやイクボスについて、③女性の活躍とスキルアップについては、地域でのコミュニケーション能力はどちらかというと女性の方がスムーズにできること、社内の中で女性男性でディスカッションを行いながらいろいろなやり方を実行していく、キャリアアップするにはとにかく現場経験が必要でそれが次への自信につながっていくなど、④情報発信では當間様より「建設機械の雑誌に取り上げられたり、那覇空港滑走路の現場で地元のテレビ局取材を受けた。自分だけでなく先輩方にも声をかけて頂いたようでとても嬉しかった」と女性オペレーターとして注目がおかれた事の大きさについてご発言されました。

最後は会場に参加した方それぞれで、名刺交換や情報交換が行われ終了となりました。

向かって左:和田智恵様 右:建設業振興基金 新倉様

このセミナーが参加した女性の皆様にとって、多くの発見やこれからの支えになればと思うと同時に、私ども事務局にもたくさんの力を頂いたように思いました。
改めて今回ご参加頂きました當間様・和田様・本村様、そして広島地区開催にご参加下さいました山崎建設㈱ 佐藤陽子様、セミナーご参加者の関係者様、各事務局の皆様(愛知県土木研究会・全中建 広島県支部・沖縄県中小建設業協会)にお礼を申し上げます。有難うございました。

向かって左から本村様・當間様・和田様

(一財)建設業振興基金より発行の「建設業 しんこう」4月号の表紙と連載「HOPE」に和田智恵様が登場されております。ご覧ください!
しんこうweb4月号


建設産業女性活躍セミナー パネルディスカッションに参加!!

平成29年10月~12月にかけて全国10都市で『建設産業女性活躍セミナー』((財)建設業振興基金主催)が開催され、全中建からも会員企業より3名の女性の皆様にパネラーとしてディスカッションへご参加を頂きました。
ご参加頂きましたパネラーの皆様や会場へ足を運んで頂いた関係者の皆様からコメントを頂くことができましたので、この場でご紹介をさせて頂きます。

【11月8日(水)広島地区 RCC文化センターにて開催】

パネラー:山崎建設㈱ 佐藤陽子様より
現場監督として勤務。

【女性の入職について必要なこと】
・女性にとって,仕事の選択肢が広がり、男女の差異のない社会であることを望みます。
・建設業で考えると,男性の体の大きさに合わせた仕様の道具が主流であることが問題であると思います。自分には,安全靴,軍手,作業着 など,女性が着用するとサイズが大きいものばかりで困ることが多いです。(足のサイズが23センチのため、安全靴選びには苦労してます。)

【ワークライフバランスについて】
現場に一日中いるため,自分の時間をどのように確保するかは意識しています。
現場監督として,休憩時間を長く取ることは難しいが,自分なりに工夫することで,リズムを作り,同じ現場で勤務する人たちとお互いの仕事への考え方を理解し合えると感じています。

 (向かって左)

全中建広島県支部(事務局)小泓 由佳様より
パネリストの皆様は,女性技術者,母親としての役割をこなし,日々,一生懸命働いている印象を強く受けた。
仕事の昼休みを活用し,一度帰宅して家事をしていること,不登校となった子どもを,自分の会社へ連れて行き,自分の勤務中の様子を見せるなど,激務でも自分の仕事を家族が理解して,それを受け入れているのだなと感じた。
男女平等が普通の社会となりつつあるが,女性は妊娠や出産で仕事を離れる事もある。男性と同様にバリバリと働き続けることは難しいと思う。そのような環境で,今回のパネリストの女性達は,会社の中で大切にされている,必要とされた存在なのだと感じた。
セミナーの中で,「ワークライフ・バランス」の必要性を強く感じた。
一旦,休職しても,復帰できる環境を整えてくれる会社があれば,専門技術を持つ女性が活躍できる場は,たくさんあると思う。
自分の働き方を改めて考えさせられるもので,将来のビジョンを考えることができ,大変参考になった。

【11月27日(月)名古屋地区 安保ホールにて開催】

〇(一社)愛知県土木研究会(事務局) 常務理事 松田 等様より
 女性活躍推進法の施行に対する国(国交省)の取組みとして、各地で推進のためのセミナーが開催され、中部においても、さる11月27日名古屋市において開催された。
 お二人の基調講演の後、パネルディスカッションでこれから建設業へ入職をされるであろう女性に「土木の仕事をわかりやすく伝えることができれば」「社内全体の意識が変わらなければ、女性が働きやすい環境は整わない」「トップが変われば改革は可能」など意見が出た。これらを改善するには、大学では土木工学という学部が殆どないのが現状のなか、工業高校には土木科という選択肢があるが、学生らの勉強の仕方や人が使うものを造る建設業を、どのようにPRしていくかに思いは尽きない感じがした。パネラーの皆さんのお話をいろいろ耳にしてそのパワーに感心しました。
 中小建設業の働き方改革はどう取り組めば。課題が山積する。

(向かって左)

【12月5日(火)沖縄地区 沖縄建設労働者研修福祉センターにて開催】


建設業界で働く女性のつどい

 建設業界でも最前線の現場で活躍する女性が増えています。全中建では平成29年7月19日、事務局に建設業界で活躍する女性の皆さんに集まっていただき、現場での実際の苦労や、やりがいなどについて語ってもらった。

― 実際に現場へ出て思ったこと ―
 當間 現場は男社会で自分には技術もなかったことから「おい!」としか呼ばれず仕事も雑用ばかりだった。今では知らない職人さんから 下の名前で呼ばれたり仕事も任せて貰えるようになりました。
 新倉 上司から「まる子」と呼ばれるので、まわりからも「まるちゃん」とニックネームで呼ばれる。現場は想像より働きやすかったです。
 須藤 現場はもっと汚い世界だと思っていたので覚悟をして入ったが、思ったより働きやすいと感じた。怒られることもあるが、女性が少ないせいか皆さんはとても優しい。良い意味で女性ならではの仕事の頼み方も学んだと思います。
 鈴木 まだ、現場に出ていないので分からない。これから自分の立ち位置なども含めて勉強していきます。
 須藤 デザインや設計をやってきたが、図面などは書けずにこの業界へ入りました。図面だけでは何も見えてこない、建設業界へ入ってみなければ分からないと思っていました。

― セクハラ等について ―
 新倉 最初から特別何も思わなかった。セクハラまがいの言葉をかけられることもあるが、あまり気にならなかったです。
 須藤 セクハラかなと思う会話もあるが、かわし方も学んでくるので大丈夫です。むしろ男性の方がセクハラ・パワハラの言葉に敏感になっている気がします。
 全員 だんだんセクハラとも思わなくなっている。(笑)
 須藤 新倉さんへの質問です。設計を理解して現場に入ることの利点を教えていただけますか。
 新倉 図面が理解できて記号の意味が分かるのが1番大きいと思う。寸法を見て3Dで想像もできることです。
 鈴木 須藤さんに質問です。現場での仕事の頼み方を教えて下さい。
 須藤 上司に言われたとおりを職人さんに伝えると怒られることがあり、なぜ?と思ったが、仕事の段取りを明確に伝えることができておらず、いまはそれを心掛けている。あとは女性なので、可愛い子ぶって頼むのも1つです。(全員 笑)
 新倉 重い物もふざけて「ああ腕が」と言うと、男性が持ってくれます。小芝居は大事です。(全員 笑)
 須藤 人によっては寡黙な方もいて、時間がかかっても距離を縮める努力をしないと仕事が進まない。最後は1番仲良くなっていることがあります。

― 休暇について ―
 須藤 現場が動いていると取れないのは分かっているので慣れてはきます。1週間のタイムスケジュールを作成している。仕事のスケジュールを30分刻みに組んで、上司と無駄な時間の使い方がないか検討をしている。仕事を見える化したことで残業を減らすことができています。

― 現場環境の変化 ― 
 當間 あまり変わっていないと思う。(全員)現場の所長によって良かったり悪かったりです。
 須藤 トイレを女性用に用意してくれたこともあったが、男性が並んでいると悪い気がしてしまう。

― 落ち込んだときの解消法 ― 
 新倉 ガンガン飲んで寝て忘れますっ!!(全員 笑)
 當間 先輩や上司に話しをして聞いてもらっています。
 須藤 年齢が近い先輩と話をします。弱みを見せられる先輩の前で思いっきり泣かせてもらっています。
 鈴木 同期の子と愚痴りながら帰ります。

― 家族の反応は ―
 新倉 あなたは大丈夫ね!と言う感じでした。
 當間 自分がやりたいと思うならと理解してくれました。
 須藤 反対はありませんでしたが、たとえ反対されても私はやります!(全員 笑)
 鈴木 すごく心配されましたが、でもやりたいならと言ってくれました。

― 今一番つらいと思うこと ― 
 新倉 現場までの通勤が長いのがきついです。
 當間 今のところありません。暑さはつらいけどそれが逆に楽しい。まわりはバテてますが自分だけ元気だったりします。
 須藤 特別ありません。何かあったらできるだけその場で解決するようにしています。
 鈴木 今はありませんがこれから何があるのかは不安です。同期の男の子には負けたくない気持ちもあり、女性だからと常に助けられるのも悔しいです。

― 結婚や出産後は ―
 當間 続けたい。できれば現場に戻りたいです。
 全員 続けたいです!

― 上司への要求 ― 
當間 何かあれば上司にもはっきり言うので特にありません。
 須藤 上司に対し親のように何でも話すので特にありません。

― 後輩に対して ―
 新倉 何でもかんでも後輩にやらせるのではなく、自分ができることはやるようにしています。
 須藤 友達のようになるが、なめられないようにしている。(全員 笑)注意するときにきつい言い方になりそうですが受け止めてほしいです。
 當間 私ははっきりと言います。「ふざけんじゃない!」とか(全員 笑)。男口調で強く言わないと聞いてもらえないので。

― これからの夢は ―
 當間 もっと女性が増えたらいいなと思う。とくにオペレーターの人が増えたらと思います。
 新倉 女性の後輩が増えたら良いと思います。男性ばかりだと口調もきつくなりがちになります。
 須藤 女性だけの現場。管理者だけ女性でやることは可能かなと思います。そんな現場だったら職人さんの気持ちも上がるのではないかと思います。(全員 笑)
 鈴木 後輩ができたらなんでも話せる先輩になりたいと思います。
 事務局 建設業で働く4名の若手女性の皆さんは、つらいことや悔しかったことすべてをバネにして精一杯仕事をされていました。女性であることがこんなにも輝く職場であったことを改めて気づかせて下さいました。
 皆様ありがとうございました。


中田有希さんに聞く

全中建 岩手
三陸土建株式会社

『女性として伸ばせるところを頑張る』

――お仕事の内容を教えて下さい――
 工事部の係長で、1級土木施工管理技士です。写真管理、図面作成、原価管理など現場管理補助が仕事の内容です。

――建設業界に入られたきっかけは何ですか――
 高校・大学と土木について学び、それを生かして働きたいと思ったのと、外で働くのもいいなあと思ったからです。現場経験年数は14年、その内2年は内業です。
 
――建設業界の魅力とは――
 人の生活のためになる、一生近く残る構造物をつくる醍醐味を味わえることです。

――男社会と言われる建設業界で女性としてのハンデや良かったことなどありますか――
 女性としてハンディがあるなら、女性としてもっと伸ばせるところを頑張りたいと思います。工事のお知らせのチラシ配りをすると、びっくりされる方もいらっしゃいますが、心持ち対応が柔らかになるような気もします。その他には、現場内の整理整頓、ごみの分別の徹底(現場がきれいだと作業しやすい環境が作れる。また、工事終了時の後片付けの時間短縮につながる)、夏の暑い日にはテントを張って日陰を作る(熱中症予防)、冬は休憩時間に温まれるよう早めにストーブを点けてあげるなどの心配りをしました。ただ、このようなことは男性の方でも行っていることなので、女性だからという考えではない気がします。

――現場で働く女性の皆さんに対する会社や現場の反応はどうでしたか――
 会社的には特別な扱いはありませんし、仕事的にも男性社員と変わりなく接して頂き(逆に女性だから気を使われるより良かったです。)、休み時間などに孤立しないよう話しかけてくれたりしてもらいました。私が県外から就職したせいもあり、盛岡のことなどをいろいろ教えてもらいました。

――女性が働く上で、建設業界や現場に求める改善点などはありますか――
 現場に女性がいる場合は、女性専用のトイレや更衣室を設ける等の環境整備を行ってほしいと思います。

――現場で常に心がけていることはありますか――
 朝礼時や休憩時間に作業員さんとのおしゃべりでコミュニケーションを取ることです。私は、治山工事などの山や林道での仕事が多かったので、キノコや山菜の話などが多かったような気がします。作業員の皆さんは、自家製の野菜やお米を持ってきてくださり、よく頂いていました。

―ーご結婚をされていて、仕事を両立していくことについて――
 私も主人も実家が近くではないので、親の協力が得られないため、子供が病気になったときは、私が仕事を休むか育児保育に預けなければなりません。現場の方や会社の方には迷惑をかけていますが、協力してもらっています。現場の仕事に携わっていたころ、急な休みを取るときは現場の写真撮りや測量、監理などの協力をお願いしていました。現在は内業ですので、皆さんから仕事を早めに依頼して頂いているため、休み明けでも間に合うようにはしています。自分的には休みずらさもありますが、笑顔で了承してもらい、気が楽な気がします。

――未来の自分について――
 現在は、いまできること(仕事・育児)を頑張るという事しか考えられないため、未来についてまでは考えていません。

――建設業を目指している女性に向けてメッセージを――
 建設業は屋外での仕事が多いため、冬は寒いし夏は暑いです。やはり大変ですが、やりがいはあると思います。女性ならではの視点で頑張れば、自分と地域の人のためになる仕事ができると思います。

――貴方の大切な時間を教えて下さい――
 夕ご飯の時間など家族との団らんです。


山口 小優美さんに聞く

一般社団法人 山形県建築協会
株式会社 市村工務店

『背筋をピンと張り印象良く』

――お仕事の内容を教えて下さい――
 一般住宅の現場監督として、お客様の笑顔と豊かな暮らしを作る仕事をしています。

――建設業界に入られたきっかけは何ですか――
 小学校の修学旅行のとき訪れた日光東照宮で、こんなにも存在感のある建物を見たのは初めてで感動したのがきっかけです。工業高校に入学して建築を学ぶにつれ、社寺だけでなく一般建築にも興味を持つようになりました。任される仕事も多くなってくる、頑張り時の3年目です。
 
――建設業界の魅力とは――
 人の暮らしを豊かにできることだと思います。

――男社会と言われる建設業界で女性としてのハンデや良かったことなどありますか――
 ハンディは無いと思っています。力の面など男性より劣っているところはあるかもしれませんが、でも、それをハンディだと思って、甘えていては成長しないと私は思います。その反面、重いものを1人で運んでいるとき、職人さんから「ほだなもたがげるんだかしたぁ?!(そんなものも持てるの?!」と驚かれたときは嬉しかったです。

――現場で常に心がけていることはありますか――
 「最高のものをつくろう」です。私の会社では、この言葉を大切にしています。お客様にとっても、会社にとっても「最高のもの」と言えるように日々仕事をしています!もう1つ心がけているのは「姿勢」です。現場で大工さんと打合せているときに、片方に体重をかける形で立っていたら「若いうちからそんな楽な姿勢ばっかりしていると、俺みたいになるぞ」と注意を受けました。それから、他の人も同じように立っているのを見た時、態度が悪いようにも見えました。「姿勢が悪い」と言うことは「態度が悪い」ということなのだと気づきました。いつまでも、背筋をピンと張れるように、他人からの印象を悪くしないように気をつけたいと思っています!

――悔しかったこと、それでも今の仕事を辞めずに続けてこられた理由は何でしょうか――
 続けての発注ミスや段取り不足で現場に大きな迷惑をかけたことがありました。自分はこの仕事に向いていないのかと思ったりもしました。そんな時、声をかけてくれたのが先輩や現場の職人さんでした。「誰だってミスをすることはある」「次は間違えないように気を付けて」と励ましてもらいました。次に頑張るチャンスをもらえたことと、困ったときには力になってくれる人たちがいるという事に感謝したいです。

――未来の自分について――
 後輩指導ができる自分になりたいです。仕事についての理解を高め、教えられるようになることが、自分自身が成長した証だと思います。

――建設業を目指している女性に向けてメッセージを――
 自分がやりたいと思う事、好きな仕事をしてください。そして、その気持ちを忘れないでください。

――大切な時間を教えて下さい――
 飼っているウサギと遊んであげる時間です。ゲージの前を通ると必ず寄ってくるので、頭を撫でてあげます。気持ち良さそうにしているのを見ると、とても癒されます。