特集 建設業界で働く女性たち

2018年12月19日

和田智恵さんに聞く

株式会社 加藤建設
 (一社)愛知県土木研究会

『いつか構造物銘板に自分の名前』

ーーお仕事の内容について教えて下さいーー
 現在は、高速道路の橋脚をつくる現場で施工管理業務をしています。現場では安全管理を中心に測量業務等の施工管理を行っています。 

ーー建設業界に入られたきっかけは何ですかーー
 現場経験年数は1年3カ月です。高校1年生の春、東日本大震災が発生、押し寄せてくる津波を高速道路の盛土がくい止めている映像を見て、すごいと思ったことです。その後、大学のオープンキャンパスで土木系学科を知る機会があり、頭の片隅で残っていた盛土の映像が「土木」という分野として頭で繋がり、自分もいつかこういう仕事に携わりたいと思ったことがきっかけです。大学に入り、コンサルタントや公務員の仕事など色々考えましたが、私は現場に出て、構造物が出来上がっていく過程を近くで見たいと思いました。  

ーー建設業界の魅力とはーー
 現場での施工管理業務をしていると、構造物が出来上がっていく過程を見ることができるということ。図面ではまだ現実にはないので2次元のもの、空想上のものが現実に存在するものになっていく、そのことに自分が関わっているということ。自分のしたことが、形として残り、地図に残ることです。 

ーー男社会と言われる建設業界で女性としてのハンデや良かった事などがありますかーー
 女性としてハンデに感じたことはあまりありません。ただ、重い物を持つときに、作業員の方に手伝ってもらったり、声をかけて貰える事はありがたいと思っています。

【拡声器を持って支持を出す和田さん】

ーー現場で働く女性の皆さん(女性技能者・技術者)に対する会社(現場)の反応や変わったことはありますかーー
 弊社で初めて女性技術者として採用していただき、お互い手探りという状態でしたが、現場の女性用トイレ設置や、事務所内に更衣室を設けていただき
ました。また、女性一人で孤立することのないようにと派遣の事務員を現場事務所に配置し、設備、環境ともに整えてもらいましたので、とても働きやすいと思いました。職人の方からは「最近、女性の監督が増えてきているから頑張って」と声をかけてもらいますし、わからないことを聞くと丁寧に教えてくれます。 

ーー女性が働く上で、建設業界や現場に求める改善点などはありますかーー
 女性用のトイレなど設備関係はとても充実していると思うのですが、男性用のトイレは入り口の扉がない場合がある。男性用の設備も女性用と同等のものにすればいいと思います。女性が使っていいなと思うものは男性の方が使っても便利なものだと思います。また、男女差があまりにあると、使っている側としても申し訳ないと感じる時があるので設備面では同等の扱いをしてほしいと思います。

ーー現場で常に心がけていることはありますかーー
 男性の人にも負けないようにと思っていますが、自分らしさ(女性らしさも含めて)を忘れない、男性社会だから仕方がないと諦めるのではなく、私の場合どうすればいいのか考えて行動することを心がけています。

ーーツライと感じたこと、それでも諦めずに続けてこられたのはーー
 自分のミスですが、測量の間違い等を立て続けにミスしてしまった時は落ち込んだり、悔しくなったりします。そういう時は自分の現場の橋脚を見て、私はこれを作っていると改めて実感し、落ち込んでいる場合ではないなと思い、頑張ろうと思います。 

ーー未来の自分についてーー
 今はまだ結婚や出産のことを深く考えていませんが、このまま現場監督を続けていきたいと思います。いつか監理技術者になり自分が携わった構造物に銘板を残したいです。そのために今はセミナーに参加して、先輩の女性技術者からアドバイスを頂き、会社ではどのような取組みをしているのか聞いています。 

ーー建設業を目指している女性に向けてメッセージをーー 
 やはり、現場で施工管理をしたいと思う反面、やっていけるだろうかという不安もありました。ですが、不安なんて感じる必要なかったと思うくらい現場の人たちは私のことを受け入れてくれました。私にはできないと思って諦めるのではなく、機会があれば一度、女性のいる工事現場を見てほしいと思いますし、可能であればその人から話を聞いてほしいです。やりがいはどの職業にも負けなくらいあるので、是非この業界に入ってきてほしいと思います。

ーー貴方の大切な時間を教えて下さいーー
 実家で飼っている猫と遊ぶことです。気まぐれなところもあるので相手にされないときもたまにありますが、そういう時は買い物に出かけます。仕事中は作業着でおしゃれをすることができないので、休日に出かけるときは服装や化粧など色々考えて出かけます。買い物をしている時も楽しいですが、出かける前の準備が楽しく、気分転換になっています。


佐藤愛夏さんに聞く

株式会社 朝倉組
 全中建 南多摩

『不安あっても周りが支えてくれる』

ーーお仕事の内容について教えて下さいーー
  私は主に施工管理をしております。実際に現場に行き、写真を撮ったり整理をしたり皆に指示をしたり広報に行ったり、伝票などをまとめています。資格については、バックホウやローラーの免許を取得しました。

ーー建設業界に入られたきっかけは何ですかーー
  お父さんが土木のお仕事をしていて、小さい頃によく一緒に現場を見に行ったりとしていく中で、どんどん興味がわいていき、小学生の頃からの夢がこの職業でした。私は入社して今年で2年目です。現場経験としては1年目です。

ーー建設業界の魅力とはーー
 今まで以上の嬉しさや達成感などの感情を持ったり、時には辛かったり、悲しかったりの感情を持ったりと、今まで以上の感情を味わう事が出来たりとやりがいがとても出てくる職業だと思います。

ーー男社会と言われる建設業界で女性としてのハンデや良かった事などがありますかーー
 ハンディは、トイレや服です。どんなに覚悟はしていても、女の子にしかないものがある時は、なかなか言えず、気軽に行けない事です。服については、作業服屋さんに行くと女性の物は少なく、特に私自身小さいので、サイズが無く買えない事です。
 良かった事は、嬉しいことを言われたときです。現場に女性がいると明るくなるとか、現場が綺麗とか、住民さんからは広報などをした時は、男性が来るより女性が来ると安心して話しやすいとおっしゃってくれた時は、女性だからこそ出来る事であって、やりがいを感じます。

ーー現場で働く女性の皆さん(女性技能者・技術者)に対する会社(現場)の反応や変わったことはありますかーー
                     
会社では、後から聞いた事なのですが、すぐ辞めるだろうと予想を皆なしていたそうです。
ですが、あっという間の1年が過ぎ、まだまだ続いていて楽しいと聞いた皆はびっくりしており、すごいと驚いていました。
 今まで、人見知りだった私がこの会社に入り建設関係の仕事をしていく中で、自ら声をかけたりと積極的に行動に移せることができた事、またそんな自分に変われた事です。

ーー女性が働く上で、建設業界や現場に求める改善点などはありますかーー
 男の世界とはいえ、トイレの扱い方や言葉の使い方がとても汚いと思いました。今は女性もどんどん増えてきているので、ちゃんとしてほしいです。そして、もっと女性の衣類や靴などを小さいものも含めて出してほしいです。

ーー現場で常に心がけていることはありますかーー
 私は常に笑顔と元気だけは忘れずにいます。そして、落ち込んでしまったら、相談し明日から改善するように心がけています。

ーーツライと感じたこと、それでも諦めずに続けてこられたのはーー
 皆に追いつけず、一人浮いていると感じてしまったときや、簡単な計算も出来なかったときは、悔しく辛い現実でした。そして、女だからって馬鹿にされる時は悲しくもあり、悔しくもありました。
 でも、それでも続けてこられたのは、上司や先輩方が親身に話を聞いてくれたからです。嫌がらず、アドバイスや時には「それはあなたのここが悪いから」と、改善策を言ってくれたりと、会社の方々の支えがあったから優しさがあるから続けてこれました。

ーー未来の自分についてーー
 2級土木施工管理技士の試験に合格し、現場監督になって、いつかは上司みたいに皆に慕われて、かっこいい監督を目指しています。

ーー建設業を目指している女性に向けてメッセージをーー 
確かに辛いことや体力的にも大変かも知れません。でもそれでもこの職業に入りたいと思ったなら、不安も沢山あるとは思いますが、それを恐れず、やりたい事を存分にやってください。そして決して諦めないでください。支えてくれる方々は沢山います。女性だからこそ出来ることも必ずあります!入社して1年目の時にこの会社に入ってよかった!楽しいと思える職業である事が1番だと思います。

ーー貴方の大切な時間を教えて下さいーー
 ちょっとした少ない時間の何気ない会話や会社での飲み会などの時の色んな人と話せる時間。そんな時間が私にとって大切な時間です。


大村優季さんに聞く

株式会社 松下産業
(一社)東京都中小建設業協会

『職人から名前で呼ばれて信頼実感』

――お仕事の内容を教えて下さい――
 現場施工管理です。入社後、大田区西馬込のマンション新築工事(自社物件、延床1393平方メートル、RC造、地下1階、地上5階建て)に配属、その後、埼玉県和光市のマンション新築工事(エコ住宅、延床4045平方メートル、RC造、地上7階)に配属されました。計画書の作成、工事写真撮影、施工管理記録の作成、材料の数量拾い・注文、墨出し・寸法のチェックなどを経験しました。

――建設業界に入られたきっかけは何ですか――
 大学で建築学科を専攻したためです。現場経験年数は2年です。


 
――建設業界の魅力とは――
 造った建物(自分自身が担当した物件)が誰かに使ってもらいながら長い間残り続けることです。

――男社会と言われる建設業界で女性としてのハンデや良かったことなどありますか――
 男性との力や体力の差は常に感じますが、例えば、重い物を運ぼうとした時、代わってくださったり、優しい方も多くいますので、先ほど申し上げた点については仕事をするうえで女性だからと不安になることは無いと思います。

――現場で働く女性の皆さん(女性技能者・技術者)に対する会社や現場の反応はどうでしたか――
 職人さんがファーストネームで呼んでくださると信頼されているのかなと嬉しく感じます。今いろいろと問題になっているセクハラ・パワハラについて必要以上に敏感になっているように感じますが、そういった面でも気を遣って下さる方が多いです。  

――女性が働く上で、建設業界や現場に求める改善点などはありますか――
 最近、女性用の作業着など増えてはいるようですが、私は身長が小さいので、安全靴や作業着などでサイズが無いこともあり、もう少し小さいサイズがあれば便利だなとは思います。

――現場で常に心がけていることはありますか――
 常に何事にも冷静に物事を考えられるように意識しています。仕事をやる上で時間に余裕を持つことや計画性も大事ですが、時間が無いときでも焦らず冷静になることで労働時間の短縮、効率化を目指しています。あと毎日お昼ご飯を楽しみにしながら仕事をしています(笑)

――未来の自分について――
 資格(1級施工管理技士、1級建築士)を早期に取得し、幅広く仕事ができればいいなと思っています。

――建設業を目指している女性に向けてメッセージを――
 この業界は、人によって、仕事のやり方も考え方も全く違います。正解は1つではないので奥が深く、面白い仕事だと私は思っていますので、興味のある方は是非この業界に入ってみてください。 

――貴方の大切な時間を教えて下さい――
 睡眠とお酒(よく飲むお酒はカクテルやサワーです)と食事の時間が私の幸せな時間です。


3/1 建設産業女性活躍セミナー 全国大会

平成30年3月1日(木)建設産業女性活躍セミナーが三田共用会議所で開催されました。
全中建からは(一社)沖縄県中小建設業協会 當間ありさ様(有限会社 牧野建設)がパネラーとして参加をして頂いたほか、名古屋地区開催の際にパネラーとしてご参加頂いた和田智恵様(株式会社 加藤建設)のほか、當間様と同じ会社の本村恵奈様(有限会社 牧野建設)にも会場にお出で頂きました。

主催者側の挨拶後、パネラー6名の自己紹介があり、コーディネーターの籠田淳子様(有限会社ゼムケンサービス)の進行により ①建設産業は男性社会のイメージが強い ②トイレなどハード面の遅れ・子育て・介護などのソフト面の課題 ③女性の活躍・スキルアップ ④情報発信についてディスカッションが行われました。

①の業界イメージについて 男性メインの職場であるのは今もあまり変わらない、大きな理由として女性の数が圧倒的に少ないから。行政側に女性が増えてきたことで徐々に変わってきていると思うなどの意見があり、當間様からは「最初は相手にもされず雑用ばかりだった。オペレーターの仕事は力では男性に負けるが、女性の方が機械操作は細かく丁寧だと思う。」と発言されました。

②トイレなどのハード面では、工期が短い現場では費用の関係で男女のトイレを設置するのは難しい、大規模な工事現場では環境整備は整っているなど、トイレを中心に皆さんの現状報告があり、この中で當間様は「入社当時の現場のトイレはとにかく汚かった。これからは国だけでなく県や民間工事でも女性専用の設備を設置してほしい」と発言されました。
子育て・介護などのソフト面では、各社の取組みのほかイクメンやイクボスについて、③女性の活躍とスキルアップについては、地域でのコミュニケーション能力はどちらかというと女性の方がスムーズにできること、社内の中で女性男性でディスカッションを行いながらいろいろなやり方を実行していく、キャリアアップするにはとにかく現場経験が必要でそれが次への自信につながっていくなど、④情報発信では當間様より「建設機械の雑誌に取り上げられたり、那覇空港滑走路の現場で地元のテレビ局取材を受けた。自分だけでなく先輩方にも声をかけて頂いたようでとても嬉しかった」と女性オペレーターとして注目がおかれた事の大きさについてご発言されました。

最後は会場に参加した方それぞれで、名刺交換や情報交換が行われ終了となりました。

向かって左:和田智恵様 右:建設業振興基金 新倉様

このセミナーが参加した女性の皆様にとって、多くの発見やこれからの支えになればと思うと同時に、私ども事務局にもたくさんの力を頂いたように思いました。
改めて今回ご参加頂きました當間様・和田様・本村様、そして広島地区開催にご参加下さいました山崎建設㈱ 佐藤陽子様、セミナーご参加者の関係者様、各事務局の皆様(愛知県土木研究会・全中建 広島県支部・沖縄県中小建設業協会)にお礼を申し上げます。有難うございました。

向かって左から本村様・當間様・和田様

(一財)建設業振興基金より発行の「建設業 しんこう」4月号の表紙と連載「HOPE」に和田智恵様が登場されております。ご覧ください!
しんこうweb4月号


建設産業女性活躍セミナー パネルディスカッションに参加!!

平成29年10月~12月にかけて全国10都市で『建設産業女性活躍セミナー』((財)建設業振興基金主催)が開催され、全中建からも会員企業より3名の女性の皆様にパネラーとしてディスカッションへご参加を頂きました。
ご参加頂きましたパネラーの皆様や会場へ足を運んで頂いた関係者の皆様からコメントを頂くことができましたので、この場でご紹介をさせて頂きます。

【11月8日(水)広島地区 RCC文化センターにて開催】

パネラー:山崎建設㈱ 佐藤陽子様より
現場監督として勤務。

【女性の入職について必要なこと】
・女性にとって,仕事の選択肢が広がり、男女の差異のない社会であることを望みます。
・建設業で考えると,男性の体の大きさに合わせた仕様の道具が主流であることが問題であると思います。自分には,安全靴,軍手,作業着 など,女性が着用するとサイズが大きいものばかりで困ることが多いです。(足のサイズが23センチのため、安全靴選びには苦労してます。)

【ワークライフバランスについて】
現場に一日中いるため,自分の時間をどのように確保するかは意識しています。
現場監督として,休憩時間を長く取ることは難しいが,自分なりに工夫することで,リズムを作り,同じ現場で勤務する人たちとお互いの仕事への考え方を理解し合えると感じています。

 (向かって左)

全中建広島県支部(事務局)小泓 由佳様より
パネリストの皆様は,女性技術者,母親としての役割をこなし,日々,一生懸命働いている印象を強く受けた。
仕事の昼休みを活用し,一度帰宅して家事をしていること,不登校となった子どもを,自分の会社へ連れて行き,自分の勤務中の様子を見せるなど,激務でも自分の仕事を家族が理解して,それを受け入れているのだなと感じた。
男女平等が普通の社会となりつつあるが,女性は妊娠や出産で仕事を離れる事もある。男性と同様にバリバリと働き続けることは難しいと思う。そのような環境で,今回のパネリストの女性達は,会社の中で大切にされている,必要とされた存在なのだと感じた。
セミナーの中で,「ワークライフ・バランス」の必要性を強く感じた。
一旦,休職しても,復帰できる環境を整えてくれる会社があれば,専門技術を持つ女性が活躍できる場は,たくさんあると思う。
自分の働き方を改めて考えさせられるもので,将来のビジョンを考えることができ,大変参考になった。

【11月27日(月)名古屋地区 安保ホールにて開催】

〇(一社)愛知県土木研究会(事務局) 常務理事 松田 等様より
 女性活躍推進法の施行に対する国(国交省)の取組みとして、各地で推進のためのセミナーが開催され、中部においても、さる11月27日名古屋市において開催された。
 お二人の基調講演の後、パネルディスカッションでこれから建設業へ入職をされるであろう女性に「土木の仕事をわかりやすく伝えることができれば」「社内全体の意識が変わらなければ、女性が働きやすい環境は整わない」「トップが変われば改革は可能」など意見が出た。これらを改善するには、大学では土木工学という学部が殆どないのが現状のなか、工業高校には土木科という選択肢があるが、学生らの勉強の仕方や人が使うものを造る建設業を、どのようにPRしていくかに思いは尽きない感じがした。パネラーの皆さんのお話をいろいろ耳にしてそのパワーに感心しました。
 中小建設業の働き方改革はどう取り組めば。課題が山積する。

(向かって左)

【12月5日(火)沖縄地区 沖縄建設労働者研修福祉センターにて開催】